六十五歳未満で発症する認知症を、若年性認知症と呼びます。全国の患者数は約3.57万人。十八歳から六十四歳の人口十万人あたり50.9人と推計されています(二〇一八年時点。日本医療研究開発機構の研究班による全国調査)。
数としては多くありません。それでも、小規模な事業所に一人おられるだけで、受け入れの形が変わります。
この記事は診断や治療の説明ではありません。診断は医師が行います。書くのは、通所と訪問の現場での受け入れ方だけです。
高齢の方と、何が違うのか
| 若年性の方 | 高齢の方 | |
|---|---|---|
| 体の力 | 保たれている。歩ける、走れる、力が強い | 落ちていることが多い |
| 仕事 | 働いていた。辞めた直後のことがある | 退職して長い |
| 家計 | 収入が途絶える。住宅の返済が残る | 年金がある |
| 家族 | 配偶者が働いている。子が学生のことがある | 子が独立している |
| 制度 | 第二号被保険者。四十歳以上から | 第一号被保険者 |
| 通所での立場 | 周囲と二十歳以上離れていることがある | 同世代が多い |
介護保険は四十歳から使えます
四十歳から六十四歳の方は第二号被保険者です。特定疾病に該当すれば、要介護認定を受けて介護保険のサービスを使えます。初老期における認知症は、この特定疾病に含まれます。
ここを知らずに「六十五歳になるまで使えない」と思っておられるご家族が、実際におられます。相談を受けたら、まずこの一点を伝えてください。
使える制度はほかにもあります。自立支援医療(精神通院医療)、精神障害者保健福祉手帳、障害年金、傷病手当金。これらは介護保険とは別の窓口です。市区町村の窓口と、若年性認知症支援コーディネーターにつないでください。各都道府県に配置されています。
通所での、いちばんの壁
居場所がない、という一点です。
五十代の方が、八十代の方々に囲まれて座っておられる。レクリエーションは唱歌と体操。話が合いません。「自分はここにいる人ではない」と感じられます。
そして、多くの場合ご本人はそれを自覚しておられます。この型は、初期に自覚が保たれていることが少なくありません。
役割を持っていただく
体の力が保たれています。だから「してもらう人」ではなく「する人」の側に立っていただけます。
- おしぼりを配る、下げる
- 机を拭く、椅子を並べる
- 車椅子の方を押していただく
- 洗い物を運ぶ、干す
- 植木の水やり、掃き掃除
手伝いではなく、その方の担当として決めてください。「これはあなたの仕事です」という形が、いちばん効きます。働いてこられた方だからです。
呼び方を変える
おじいちゃん、おばあちゃんという呼び方は使えません。名字に「さん」で統一してください。ほかの方への呼び方も、同じ場に居るなら統一したほうが空気が整います。
活動を分ける
全員一律の活動から外れる時間を作ってください。別の机で新聞を読む、外で体を動かす、職員と別の作業をする。同じ部屋に居ることが目的ではありません。
活動の種類はレクと体操にまとめています。体の力が保たれている方には、脳トレや漢字のほうが、唱歌より届くことがあります。

ご家族の事情を、先に知っておく
配偶者が働いておられます。多くの場合、働き続けなければ家計が持ちません。
だから送迎の時刻が動かせないことがあります。出勤前に送り出さなければならない、帰宅が十九時を過ぎる。この事情を先に聞いてください。聞かずに一般の便に組み込むと、続きません。
便の組み方は送迎ルートの組み方に書いています。時刻が動かせない方を先に置いてから、ほかを組みます。
お子さんが学生のことがあります。介護のために進路を変える、学校を休むという場面が実際に起きます。直接できることは多くありませんが、事情を知っていれば、連絡の取り方も、ショートステイを勧める時期も変わります。
ご本人に自覚があるときの関わり方
初期には、自分の変化に気づいておられます。できていたことができない。言葉が出ない。それを、こちらが思っている以上に深く受け止めておられます。
だから、できないことを指摘しないでください。手伝うときは、先回りして自然に整えます。「できていませんよ」ではなく、何も言わずに横で同じことをして、揃えます。
そして、できたことは言葉にしてください。役割を果たした、という実感が、いちばんの支えになります。
診断名を確認してください
若年性認知症は、一つの病気の名前ではありません。六十五歳未満で発症した認知症の総称です。中身は、アルツハイマー型のことも、血管性のことも、前頭側頭型のこともあります。
とくに前頭側頭型は、この年代で始まることが多い型です。ふるまいの変化が目立つなら、関わり方はそちらの記事を読んでください。年齢による分類と、型による分類は、別のものです。
型ごとの違いは認知症の種類と現場での関わり方にまとめています。
評価を取るとき
体の力が保たれているので、障害高齢者の日常生活自立度は J や A で出ます。ADLも高く出ます。
それでも生活に困難があります。困難さは認知症高齢者の日常生活自立度と、老研式活動能力指標のほうに出ます。体の尺度だけで見ると、この方々の困難は見えません。必ず四つ並べて取ってください。
事業所として、受け入れると決めるなら
一人受け入れると決めたら、その方のための形を作ってください。役割、席、時刻、活動、呼び方。この五つを紙一枚にまとめて、職員全員が同じ形で関わります。
そして、その受け入れができる事業所だということは、地域に伝わります。ケアマネジャーは、受け入れ先を探して困っておられるからです。
事業所の顔が見える形で伝わると、相談が来るようになります。私たちが作る事業所の頁は、そのために作ります。介護の事業所だけのホームページ制作をご覧ください。
この記事の数字の出どころ
患者数3.57万人、有病率十万人あたり50.9人は、日本医療研究開発機構(AMED)の研究班による全国調査(二〇一七年度から二〇一九年度、東京都健康長寿医療センター研究所ほか)の公表値です。二〇一八年時点の推計にあたります。
ケアマネジャーとご家族と求職者に届く形で作ります。送迎の到着予告は、後から積めるオプションです。相談と見積もりは無料です。
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