送迎のマニュアルに書くことは、五つに畳めます。便の組み方、当日の変更をどう伝えるか、乗るときと降りるときの確認、事故と急変が起きたときの動き、そして記録の残し方です。この五つが決まっていれば、新しい運転者が入っても同じ送迎ができます。この記事は、通所介護の送迎を事業所の側から整理したものです。運営規程と安全計画に関わる部分は、指定権者の案内で確かめてください。
一、便の組み方
先に決めるのは、便の数、出発の時刻、一便あたりの軒数、そして回る順です。回る順は「施設から最も遠い家から始めて、施設へ近づく」が基本です。最後に施設へ着くので、遠い家の方が車内にいる時間が長くなります。体調の重い方を最後の方に置くと、乗っている時間が短くなります。
順を決めたら、その順で走ったときの道のりと所要を一度測ります。地図の直線距離ではなく、実際の道です。私たちが神戸市西区で測ったところ、直線距離の 1.5 倍から 1.9 倍でした。時速 22 キロで、一軒あたり 2 分の乗り降りを見ておくと、実際に近い数字になります。

二、当日の変更の伝え方
いちばん抜けるのはここです。朝、家族から「今日は休みます」と電話が入る。事務所の紙に書く。運転者に伝える。運転者は送迎表に書き足す。そして、後ろのお宅が早まることを、もう一度電話で伝える。この連鎖のどこかで必ず抜けます。
マニュアルには、誰が受けて、誰に、どの順で伝えるかを一本の線で書きます。受けた人が送迎表に書くのか、事務所の板に書くのか。運転者が出発した後の変更は、電話か、端末か。決めておかないと、その日いた人の判断になります。
三、乗るときと降りるときの確認
令和 5 年以降、送迎の置き去りを防ぐ確認と、安全計画の作成が求められています。マニュアルには、乗車のときに誰が何を確認するか、降車のときに車内をどう見るか、確認した記録をどこに残すかを書きます。座席の数だけ確認する、最後列まで目で見る、といった具体の動きまで書いておくと、新しい人でも同じことができます。
四、事故と急変
車が止まる場所、連絡の順番(事業所、家族、主治医、保険)、利用者を車内で待たせるかどうか、代わりの車をどうするか。ここは短くていいので、電話番号と順番だけは一枚にまとめて車に置きます。

五、記録の残し方
残すのは五つです。便ごとの出発と終了の時刻、各お宅の通過(乗車と降車)の時刻、当日の欠席と順の変更、運転者と車両、そして送迎の範囲。日付ごとに読める形にしておくと、運営指導で送迎の実施を確かめられたときにその場で出せます。
送迎表に載せる項目
一枚の送迎表に入れるのは、この並びです。日付、便の名前、車両、運転者と添乗者、各利用者の名前と住所と目印、乗車と降車の時刻の欄、欠席の欄、備考。目印の欄を作っておくと、代わりの運転者が入った日に迷いません。青い門、角の家、駐車場の奥。これだけで到着が数分変わります。
手で書く方式と、自動で残す方式
手で書く方式では、運転者が時刻を書き込みます。車を止めて書くので走行中には書けず、事務所に戻ってからまとめて書く事業所が多く、時刻が記憶に頼りがちです。欠席と順の変更は、朝の電話の内容を別の紙に書き、あとで送迎表に写します。写し漏れが起きやすいのはここです。
自動で残す方式では、運転者が便を選んで運行を開始し、家の前を通ると通過の時刻が自動で付きます。手動で押す道も残しておくと、家の前に止められない場合にも対応できます。欠席は家族から直接届くので、写し漏れがなくなります。
一便に入れる軒数と、出発の時刻
一便に 6 軒を入れると、乗り降りだけで 12 分、走る時間が 25 分ほどで、合計 40 分前後になります。8 軒にすると 55 分を超え、最初に乗った方が一時間近く車内にいることになります。体調と季節を考えると、一便は 6 軒から 7 軒が上限だと考えます。
出発の時刻は、施設の受け入れの開始から逆算します。9 時 30 分に受け入れを始めるなら、最後の便が 9 時 25 分に着く形です。一便 40 分なら 8 時 45 分の出発、二便を回すなら一便目は 8 時 5 分になります。ここに余裕を入れないと、雨の日と渋滞の日に必ず遅れます。10 分を余裕として見ておくことを勧めます。
添乗者を付けるかどうか
運転者ひとりで回るか、添乗の職員を付けるか。判断は、玄関から車までの介助が要る方が何人いるかで決まります。二人介助の方が一人でもいれば、その便には添乗者が要ります。車椅子のリフトの操作を運転者ひとりで行うと、乗せている間に車内の他の方から目が離れます。
添乗者を付けられない事業所では、二人介助の方を同じ便に集めず、便を分ける方法があります。マニュアルには、どの便に添乗者を付けるかを曜日ごとに書いておきます。
送迎表に入れる項目の一覧
一枚の送迎表に入れるのは、この十二項目です。手で書く場合も、仕組みで残す場合も、必要なものは変わりません。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 日付・曜日 | 年月日と曜日。曜日で便の編成が変わる事業所は必須です |
| 便の名前 | 朝1便、夕2便など。事業所で呼んでいる呼び方に合わせます |
| 車両 | 1号車、2号車。ナンバーまで書く事業所もあります |
| 運転者・添乗者 | 誰が運転し、誰が付いたか。事故のときに要ります |
| 回る順 | 1 から順に番号。当日変わったら二重線で消して書き直します |
| 利用者の名前 | 姓だけでも構いませんが、同姓が二人いる事業所は名まで書きます |
| 住所 | 番地まで。代わりの運転者が入った日に迷いません |
| 目印 | 青い門、角の家、駐車場の奥。これだけで到着が数分変わります |
| 乗車の時刻 | 玄関を出た時刻でなく、車に乗った時刻を書きます |
| 降車の時刻 | 帰りの便で書きます。ご家族に引き渡した時刻です |
| 欠席 | 誰が休んだか。理由は書かなくても構いません |
| 備考 | 道路が工事中、玄関先で待っておられた、など |
天候と道路の事情を、どう書いておくか
マニュアルで抜けやすいのが、いつもと違う日の決め方です。大雨と大雪、道路の工事、学校行事による渋滞。この三つは毎年必ず来ます。
決めておくのは三つです。一つ目、出発を早めるかどうかと、その判断を誰がするか。二つ目、ご家族にいつ知らせるか。三つ目、間に合わないと分かったときに、施設の受け入れの時刻をずらすかどうか。管理者が不在の日にも判断できるよう、基準を数字で書いておきます。たとえば「積雪の予報が出た日は 15 分早める」といった形です。
雨の日は、乗り降りが倍かかります。
傘をたたみ、足元を確かめ、濡れた床で滑らないように支える。晴れの日に 2 分の家が、雨の日には 4 分かかります。6 軒の便なら 12 分の遅れです。この分を見込んでいない送迎表は、雨のたびに崩れます。
事故と急変の一枚
車に置く一枚には、これだけを書きます。事業所の番号、管理者の携帯、保険会社の事故受付、警察と消防。そして順番です。人の安全、警察と消防、事業所、ご家族、保険。この順を書いておかないと、動揺した状態では順番が飛びます。
利用者を車内で待たせるかどうかも決めておきます。夏と冬は車内の温度が危険になるため、状況によっては近くの建物に移ります。「どこに移るか」を、便ごとにあらかじめ決めておく事業所もあります。
マニュアルを作ったあとの点検
作って終わりにすると、半年で現実と合わなくなります。次の八項目を、年に一度は見直します。
- 回る順は今の利用者に合っているか新しい方が入り、辞めた方がいるはずです。順が古いまま走っていないか。
- 一便の所要は実績と合っているか記録に残っている出発と終了の差を見れば分かります。
- 当日の変更の伝え方が守られているか決めた線と、実際にやっていることが違っていないか。
- 乗降の確認の手順が守られているか最後列まで見る動きが、全員できているか。
- 事故の一枚の電話番号は生きているか保険の担当者が変わっていないか。
- 送迎の範囲は今も同じか広げたなら、範囲外の相談の受け方も決めます。
- 記録が 400 日分そろっているか抜けている日があれば、原因を探します。
- 新しい運転者がこれだけで走れるか読ませて、分からない所を聞くのがいちばん早い点検です。
よくある質問
送迎表は何年残せばよいですか
介護保険の記録の保存は、市町村の条例で二年から五年と定められています。多くの自治体が五年です。送迎の記録も、サービスの提供の記録の一部として同じ期間を見ておくのが安全です。所在地の指定権者の案内で確かめてください。
手書きの送迎表を電子にしてよいですか
できます。記録の電子化は認められており、いつでも読める形で保存されていることが条件です。紙で出せる形にしておくと、運営指導のときに困りません。
運転者が私物のスマートフォンで地図を見てもよいですか
地図を見ること自体は問題ありませんが、事業所として決めておくべきことが二つあります。運転中に操作しないこと、そして利用者の住所を私物の端末に残さないことです。事業所の端末を車に固定する方式にすると、この二つが同時に解決します。
共同送迎はどう扱いますか
令和 6 年度の改定で、送迎の業務を他の事業者に委託し、複数の事業所の利用者を同じ車に乗せることが認められました。マニュアルには、委託先との連絡の窓口、記録を誰が残すか、事故のときの責任の所在を書き足します。
どちらの方式でも、送迎表の項目そのものは変わりません。まず紙の様式を整え、そのうえで自動にするかを決めるのが順番です。送迎の記録は、何をどう残すか と 通所介護の送迎減算 もあわせてお読みください。記録が自動で残る仕組みは かぞくのまど のオプションでご用意しています。
ケアマネジャーとご家族と求職者に届く形で作ります。送迎の到着予告は、後から積めるオプションです。相談と見積もりは無料です。
制作の内容と料金を見る


