読み物

デイサービスの送迎マニュアルと送迎表。何を決めて、何を残すか

2026.09.10空音開発約 7 分で読めます

送迎のマニュアルに書くことは、五つに畳めます。便の組み方、当日の変更をどう伝えるか、乗るときと降りるときの確認、事故と急変が起きたときの動き、そして記録の残し方です。この五つが決まっていれば、新しい運転者が入っても同じ送迎ができます。この記事は、通所介護の送迎を事業所の側から整理したものです。運営規程と安全計画に関わる部分は、指定権者の案内で確かめてください。

一、便の組み方

先に決めるのは、便の数、出発の時刻、一便あたりの軒数、そして回る順です。回る順は「施設から最も遠い家から始めて、施設へ近づく」が基本です。最後に施設へ着くので、遠い家の方が車内にいる時間が長くなります。体調の重い方を最後の方に置くと、乗っている時間が短くなります。

順を決めたら、その順で走ったときの道のりと所要を一度測ります。地図の直線距離ではなく、実際の道です。私たちが神戸市西区で測ったところ、直線距離の 1.5 倍から 1.9 倍でした。時速 22 キロで、一軒あたり 2 分の乗り降りを見ておくと、実際に近い数字になります。

当日の変更をどう伝えるかを、朝の申し送りで一本の線にしておきます
当日の変更をどう伝えるかを、朝の申し送りで一本の線にしておきます

二、当日の変更の伝え方

いちばん抜けるのはここです。朝、家族から「今日は休みます」と電話が入る。事務所の紙に書く。運転者に伝える。運転者は送迎表に書き足す。そして、後ろのお宅が早まることを、もう一度電話で伝える。この連鎖のどこかで必ず抜けます。

マニュアルには、誰が受けて、誰に、どの順で伝えるかを一本の線で書きます。受けた人が送迎表に書くのか、事務所の板に書くのか。運転者が出発した後の変更は、電話か、端末か。決めておかないと、その日いた人の判断になります。

三、乗るときと降りるときの確認

令和 5 年以降、送迎の置き去りを防ぐ確認と、安全計画の作成が求められています。マニュアルには、乗車のときに誰が何を確認するか、降車のときに車内をどう見るか、確認した記録をどこに残すかを書きます。座席の数だけ確認する、最後列まで目で見る、といった具体の動きまで書いておくと、新しい人でも同じことができます。

四、事故と急変

車が止まる場所、連絡の順番(事業所、家族、主治医、保険)、利用者を車内で待たせるかどうか、代わりの車をどうするか。ここは短くていいので、電話番号と順番だけは一枚にまとめて車に置きます。

記録が自動で残る形にすると、事務所に戻ってから書き起こす時間が消えます
記録が自動で残る形にすると、事務所に戻ってから書き起こす時間が消えます

五、記録の残し方

残すのは五つです。便ごとの出発と終了の時刻、各お宅の通過(乗車と降車)の時刻、当日の欠席と順の変更、運転者と車両、そして送迎の範囲。日付ごとに読める形にしておくと、運営指導で送迎の実施を確かめられたときにその場で出せます。

送迎表に載せる項目

一枚の送迎表に入れるのは、この並びです。日付、便の名前、車両、運転者と添乗者、各利用者の名前と住所と目印、乗車と降車の時刻の欄、欠席の欄、備考。目印の欄を作っておくと、代わりの運転者が入った日に迷いません。青い門、角の家、駐車場の奥。これだけで到着が数分変わります。

手で書く方式と、自動で残す方式

手で書く方式では、運転者が時刻を書き込みます。車を止めて書くので走行中には書けず、事務所に戻ってからまとめて書く事業所が多く、時刻が記憶に頼りがちです。欠席と順の変更は、朝の電話の内容を別の紙に書き、あとで送迎表に写します。写し漏れが起きやすいのはここです。

自動で残す方式では、運転者が便を選んで運行を開始し、家の前を通ると通過の時刻が自動で付きます。手動で押す道も残しておくと、家の前に止められない場合にも対応できます。欠席は家族から直接届くので、写し漏れがなくなります。

1.5直線距離に対する実際の道のり。市街地での実測
22km/h住宅街の平均。信号と一時停止を含む
2一軒あたりの乗り降り。介助が要る方は 4 分

一便に入れる軒数と、出発の時刻

一便に 6 軒を入れると、乗り降りだけで 12 分、走る時間が 25 分ほどで、合計 40 分前後になります。8 軒にすると 55 分を超え、最初に乗った方が一時間近く車内にいることになります。体調と季節を考えると、一便は 6 軒から 7 軒が上限だと考えます。

出発の時刻は、施設の受け入れの開始から逆算します。9 時 30 分に受け入れを始めるなら、最後の便が 9 時 25 分に着く形です。一便 40 分なら 8 時 45 分の出発、二便を回すなら一便目は 8 時 5 分になります。ここに余裕を入れないと、雨の日と渋滞の日に必ず遅れます。10 分を余裕として見ておくことを勧めます。

添乗者を付けるかどうか

運転者ひとりで回るか、添乗の職員を付けるか。判断は、玄関から車までの介助が要る方が何人いるかで決まります。二人介助の方が一人でもいれば、その便には添乗者が要ります。車椅子のリフトの操作を運転者ひとりで行うと、乗せている間に車内の他の方から目が離れます。

添乗者を付けられない事業所では、二人介助の方を同じ便に集めず、便を分ける方法があります。マニュアルには、どの便に添乗者を付けるかを曜日ごとに書いておきます。

送迎表に入れる項目の一覧

一枚の送迎表に入れるのは、この十二項目です。手で書く場合も、仕組みで残す場合も、必要なものは変わりません。

項目書くこと
日付・曜日年月日と曜日。曜日で便の編成が変わる事業所は必須です
便の名前朝1便、夕2便など。事業所で呼んでいる呼び方に合わせます
車両1号車、2号車。ナンバーまで書く事業所もあります
運転者・添乗者誰が運転し、誰が付いたか。事故のときに要ります
回る順1 から順に番号。当日変わったら二重線で消して書き直します
利用者の名前姓だけでも構いませんが、同姓が二人いる事業所は名まで書きます
住所番地まで。代わりの運転者が入った日に迷いません
目印青い門、角の家、駐車場の奥。これだけで到着が数分変わります
乗車の時刻玄関を出た時刻でなく、車に乗った時刻を書きます
降車の時刻帰りの便で書きます。ご家族に引き渡した時刻です
欠席誰が休んだか。理由は書かなくても構いません
備考道路が工事中、玄関先で待っておられた、など

天候と道路の事情を、どう書いておくか

マニュアルで抜けやすいのが、いつもと違う日の決め方です。大雨と大雪、道路の工事、学校行事による渋滞。この三つは毎年必ず来ます。

決めておくのは三つです。一つ目、出発を早めるかどうかと、その判断を誰がするか。二つ目、ご家族にいつ知らせるか。三つ目、間に合わないと分かったときに、施設の受け入れの時刻をずらすかどうか。管理者が不在の日にも判断できるよう、基準を数字で書いておきます。たとえば「積雪の予報が出た日は 15 分早める」といった形です。

雨の日は、乗り降りが倍かかります。

傘をたたみ、足元を確かめ、濡れた床で滑らないように支える。晴れの日に 2 分の家が、雨の日には 4 分かかります。6 軒の便なら 12 分の遅れです。この分を見込んでいない送迎表は、雨のたびに崩れます。

事故と急変の一枚

車に置く一枚には、これだけを書きます。事業所の番号、管理者の携帯、保険会社の事故受付、警察と消防。そして順番です。人の安全、警察と消防、事業所、ご家族、保険。この順を書いておかないと、動揺した状態では順番が飛びます。

利用者を車内で待たせるかどうかも決めておきます。夏と冬は車内の温度が危険になるため、状況によっては近くの建物に移ります。「どこに移るか」を、便ごとにあらかじめ決めておく事業所もあります。

マニュアルを作ったあとの点検

作って終わりにすると、半年で現実と合わなくなります。次の八項目を、年に一度は見直します。

よくある質問

送迎表は何年残せばよいですか

介護保険の記録の保存は、市町村の条例で二年から五年と定められています。多くの自治体が五年です。送迎の記録も、サービスの提供の記録の一部として同じ期間を見ておくのが安全です。所在地の指定権者の案内で確かめてください。

手書きの送迎表を電子にしてよいですか

できます。記録の電子化は認められており、いつでも読める形で保存されていることが条件です。紙で出せる形にしておくと、運営指導のときに困りません。

運転者が私物のスマートフォンで地図を見てもよいですか

地図を見ること自体は問題ありませんが、事業所として決めておくべきことが二つあります。運転中に操作しないこと、そして利用者の住所を私物の端末に残さないことです。事業所の端末を車に固定する方式にすると、この二つが同時に解決します。

共同送迎はどう扱いますか

令和 6 年度の改定で、送迎の業務を他の事業者に委託し、複数の事業所の利用者を同じ車に乗せることが認められました。マニュアルには、委託先との連絡の窓口、記録を誰が残すか、事故のときの責任の所在を書き足します。

どちらの方式でも、送迎表の項目そのものは変わりません。まず紙の様式を整え、そのうえで自動にするかを決めるのが順番です。送迎の記録は、何をどう残すか通所介護の送迎減算 もあわせてお読みください。記録が自動で残る仕組みは かぞくのまど のオプションでご用意しています。

介護の事業所だけの、ホームページ制作です。

ケアマネジャーとご家族と求職者に届く形で作ります。送迎の到着予告は、後から積めるオプションです。相談と見積もりは無料です。

制作の内容と料金を見る
朝比奈幸太郎
朝比奈幸太郎

芸術家、空音開発創業者。二十代の終わりから三十代にかけて、要介護 5 の祖母と要介護 2 の祖父を一人で在宅介護しました。公開されている測位の基準局を毎日測り、記録を番号付きで公開しています。介護事業所のホームページ制作と、送迎の到着予告「かぞくのまど」を運営しています。運営者情報