認知症には種類があります。そして、種類によって現場での関わり方がまったく変わります。ある方に効いた声のかけ方が、別の方には逆に働く。その理由の多くは、種類の違いにあります。
この記事は、症状や診断の説明ではありません。医師が診断し、薬を決めます。私たちが書くのは、通所と訪問の現場で、どう関わるかという一点です。
四つの種類
| 種類 | 目立つところ | 進み方 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 新しいことを覚えられない。少し前のことを忘れる | ゆるやかに進む |
| 血管性 | できることとできないことの差が大きい。感情が抑えにくい | 段階的に進む |
| レビー小体型 | 見えないものが見える。動作が遅くなる。日によって差が大きい | 変動しながら進む |
| 前頭側頭型 | 人柄が変わる。同じ行動を繰り返す。記憶は比較的保たれる | ゆるやかに進む |
いちばん多いのはアルツハイマー型です。複数の型が重なっている方もおられます。
アルツハイマー型。忘れたこと自体を忘れます
同じことを何度も聞かれます。さっき答えたばかりでも、その方にとっては初めて聞いた質問です。
「さっき言いましたよ」は使えません。その方の記憶には、聞いた事実がありません。言われた側は、責められたことだけが残ります。
現場の対応はこうです。何度でも、初めてのように答える。答えを紙に書いて渡す。予定はカレンダーに大きく書いて目に入る場所に貼る。覚えてもらうのではなく、覚えなくても困らない形にします。
血管性。できる日とできない日があります
まだら認知症と呼ばれることがあります。判断力は保たれているのに、特定のことだけができない。あるいは、午前はしっかりしていて午後は違う。
ここでいちばん多い誤解が、「わざとやっていない」という見方です。昨日できたことが今日できないと、そう見えてしまいます。そうではありません。
もう一つ、感情が抑えにくくなることがあります。少しのことで涙が出る、急に怒る。これも脳の状態によるもので、人柄が変わったわけではありません。落ち着かれるのを待ってから、何事もなかったように続けてください。

レビー小体型。見えているものを否定しません
「そこに子どもがいる」「虫が這っている」。実際には無いものが、はっきりと見えています。
「いませんよ」と言っても解決しません。その方には見えているからです。否定されると、見えているのに信じてもらえないという孤立が残ります。
現場の対応は三つです。まず見えているという前提で受け止める。次に、その場から離れていただくか、明るくする(暗がりや影が見間違いを呼びます)。そして、話題を変える。
体の動きも変わります。動作が遅くなり、歩幅が小さくなり、転びやすくなります。急かさないこと。そして転倒への備えが、ほかの型より重く要ります。
日によっての差が大きいのも特徴です。昨日と今日で別人のように見えることがあります。ADL の採点を取るときは、良い日か悪い日かを記録に添えてください。添えないと、変化の読み違えが起きます。
薬への反応が強く出ることがあります。
種類によっては、少量でも強く効きすぎることが知られています。薬を飲み始めてから急にふらつく、眠り込む、動けなくなったときは、速やかに医師に伝えてください。現場で判断せず、必ず医師へ渡します。
前頭側頭型。叱っても届きません
いちばん誤解されやすい型です。記憶は比較的保たれています。だから「分かっているのにやっている」と見えます。
お店のものを黙って持ってくる、人の食べ物に手を出す、気に入らないと席を立つ。これは人柄の問題ではなく、抑える働きが弱くなった結果です。
叱る対応は効きません。叱られた理由が結びつかないうえに、関係だけが壊れます。
効くのは環境の側を変えることです。手の届く場所に置かない。決まった席にする。同じ道順、同じ時刻で流れを作る。同じ行動を繰り返す性質は、こちらから使えます。良い習慣を一つ作れば、それが続きます。
この型は、六十五歳未満で始まることが少なくありません。若年性認知症の記事もあわせてご覧ください。
種類が分かると、記録の取り方が変わります
種類が分からないまま「困った行動」として記録すると、対応が積み上がりません。
| 記録の仕方 | 次につながるか |
|---|---|
| 「帰宅願望あり」 | つながらない |
| 「十五時ごろ、玄関へ向かわれる。『子どもを迎えに行く』と話される。窓際の席に移り、昔の仕事の話をすると落ち着かれた」 | つながる |
いつ、どんな場面で、何と言われ、何をしたら落ち着いたか。この四つを書いてください。次に担当する職員が、そのまま使えます。
診断名が分からないときは
主治医意見書に記載があります。ケアマネジャーに確認してください。記載が「認知症」だけのこともあります。
そのときは、症状の出方から見立てを持ちます。幻視があるならレビー小体型、人柄の変化と繰り返しが目立つなら前頭側頭型、できる日とできない日の差が大きいなら血管性。ただし見立ては見立てであって、診断ではありません。記録には「〜のような様子が見られる」と書き、断定しません。
生活の困難さは、別に測ります
種類と重さは別のものです。認知症による生活の困難さは、認知症高齢者の日常生活自立度で判定します。認知の働きそのものは長谷川式で点数にできます。
そして体の状態は障害高齢者の日常生活自立度とADLで見ます。四つを同じ日に取って並べると、その方の姿が立体になります。
ご家族に伝えるとき
種類の名前だけを伝えないでください。ご家族が知りたいのは、これから何が起きるのかと、自分は何をすればよいのかの二つです。
伝えられるのは事実だけです。事業所でどんな場面があり、どう関わったら落ち着かれたか。「うちではこうしたら落ち着かれました」は、ご家族が家で試せる情報です。診断や見通しは医師にお任せします。
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