「そこに子どもが立っている」と言われたとき、なんと答えますか。この一問に、この型との関わり方がすべて詰まっています。
この記事は診断や治療の説明ではありません。診断は医師が行います。書くのは、通所と訪問の現場での関わり方だけです。
三つの特徴
| 特徴 | 現場での現れ方 |
|---|---|
| 幻視 | 実際には無いものが、はっきり見える。人、子ども、動物、虫 |
| 動作の変化 | 動きが遅くなる。歩幅が小さくなる。手が震える。転びやすくなる |
| 日によっての差 | しっかりしている日と、ぼんやりしている日がある。一日の中でも変わる |
そのほか、夜間に大きな声を出す、手足を動かすといった睡眠中の様子や、立ちくらみ、便秘などが見られることがあります。
幻視。否定も肯定もしない、三つの手
「いませんよ」は解決になりません。その方には見えています。否定されると、見えているのに信じてもらえないという孤立が残ります。
かといって「いますね」と話を合わせると、その話が続いてしまうことがあります。
現場で使えるのは、この三つです。
一、受け止める。「そうですか、そこにおられるんですね」。事実として認めるのではなく、そう見えていることを受け止めます。この一言で、多くの方が落ち着かれます。
二、環境を変える。暗がり、影、模様、カーテンの揺れ。これらが見間違いを呼びます。明るくする。壁の染みを消す。ハンガーに掛けた上着を片づける。夕方に照明を早めに点ける。これだけで幻視が減る方がおられます。
三、場所を変える。「あちらでお茶にしましょうか」と、その場から離れていただく。見えている場所から動くと、多くの場合そこで切れます。
怖がっておられるかどうかで、優先順位が変わります。
子どもが遊んでいるのが見えて、微笑んでおられるなら、急いで止める必要はありません。虫が這っていて怯えておられるなら、すぐに場所を変えます。その方が困っているかどうかで判断してください。
動作の遅さ。急かさないことが、転倒の予防になります
動きが遅くなり、最初の一歩が出にくくなります。方向を変えるときと、立ち上がるときが、いちばん危ないところです。
そして急かすと、さらに危なくなります。「もう少し早く」と言われると、体が追いつかないまま動こうとして、転びます。
- 声をかけてから、動き出すまで待つ。数秒かかることがあります
- 方向転換は、小さく何度も回っていただく。一度で回らない
- 立ち上がるときは、前に手すりか支えを置く
- 送迎の乗り降りに、ほかの方の倍の時間を見ておく
送迎の便を組むときは、この方を最後の方に乗せる、あるいは軒数を減らしてください。一便の所要の計算は送迎ルートの組み方に書いています。
日によっての差。記録に「今日はどちらか」を添える
この型でいちばん現場を混乱させるのが、日によっての差です。昨日は会話が成立したのに、今日はぼんやりしている。夕方になると別人のようになる。
職員によって見ている姿が違うので、申し送りが噛み合わなくなります。「私が見たときはしっかりしていました」「私のときは全然でした」。どちらも本当です。
だから記録に、その日の状態を一言添えてください。「今日はしっかりしておられた」「午後からぼんやりされていた」。これがあるだけで、申し送りが噛み合います。
評価の尺度を取るときも同じです。ADL の採点や長谷川式を、たまたま悪い日に取ると、実際より低く出ます。取った日が良い日だったか悪い日だったかを、必ず書き添えてください。

薬に気づいたときは、すぐ医師へ渡す
この型は、薬への反応が強く出ることが知られています。
薬が変わってから、急にふらつく。眠り込んでしまう。動けなくなった。表情が消えた。こうした変化に最初に気づくのは、毎日見ている職員です。
現場で判断しないでください。気づいたことを、いつからどう変わったかとあわせて、ご家族とケアマネジャーを通じて医師へ渡します。私たちの仕事は、気づいて、正確に伝えることです。
夜の様子を、ご家族から聞いてください
夜間に大きな声を出す、手足を動かす。これは通所では見えません。家で受け止めているのはご家族です。
送迎のときや連絡帳で「夜はいかがですか」と一言聞いてください。そこで初めて出てくることがあります。そして、それを聞いた時点で、ご家族の疲れを想像してください。ショートステイの提案が必要な時期かもしれません。
記録の書き方
「幻視あり」では、次につながりません。
| 書き方 | |
|---|---|
| 薄い | 幻視あり。声かけで対応 |
| 使える | 十四時ごろ、窓際の席で「あそこに子どもがいる」と話される。怯えた様子はなく、笑っておられた。カーテンを開けて明るくし、席を移動していただくと、その後は話題に出なかった |
いつ、どこで、何が見えていて、怖がっていたかどうか、何をしたら切れたか。この五つです。次に担当する職員が、そのまま使えます。
ほかの型との違い
アルツハイマー型、血管性、前頭側頭型との違いは認知症の種類と現場での関わり方にまとめています。
生活の困難さは認知症高齢者の日常生活自立度で、認知の働きは長谷川式で、体の状態は障害高齢者の日常生活自立度で見ます。この型は体と認知の両方が動くので、四つを並べて見る意味が特に大きくなります。
ご家族に伝えること
「幻視は、この型では珍しいことではありません」。これを伝えるだけで、ご家族の不安が下がることがあります。ご家族は、頭がおかしくなってしまったのかと思い詰めておられることがあるからです。
そして、事業所でどう関わったら落ち着かれたかを伝えてください。家で試せる形にして渡すこと。それが、いちばん役に立つ情報です。
日々の様子は、写真を一枚と一行の言葉で伝わります。私たちが作る事業所の頁では、その場で公開されます。介護の事業所だけのホームページ制作をご覧ください。
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