高齢の方の体重は、落ち始めると速く落ちます。そして落ちてから戻すのは、落ちるより何倍も難しい。だから、落ち始めに気づくことがすべてです。
計算式
体重減少率(%)=(前の体重 − 今の体重)÷ 前の体重 × 100
割るのは前の体重です。今の体重で割ると数が変わります。52 kg から 49 kg へ減ったなら、3 ÷ 52 × 100 = 5.8 %です。
判定の基準
厚生労働省の栄養ケア・マネジメントに、低栄養リスクの判定基準が示されています。体重減少率だけでなく、BMI と血清アルブミン値も合わせて見ます。
| 項目 | 低リスク | 中リスク | 高リスク |
|---|---|---|---|
| BMI | 18.5 〜 29.9 | 18.5 未満 | — |
| 1 か月の減少率 | 3 %未満 | 3 %以上 5 %未満 | 5 %以上 |
| 3 か月の減少率 | 3 %未満 | 3 %以上 7.5 %未満 | 7.5 %以上 |
| 6 か月の減少率 | 3 %未満 | 3 %以上 10 %未満 | 10 %以上 |
| 血清アルブミン | 3.6 g/dL 以上 | 3.0 〜 3.5 g/dL | 3.0 g/dL 未満 |
一つでも高リスクに当たれば、高リスクとして扱います。全部が揃う必要はありません。
短い期間ほど基準が厳しいことに注目してください。一か月で 5 %は、六か月で 10 %より重い事態です。速く落ちているからです。
体重 50 kg の方で、何 kg にあたるか
| 期間 | 中リスク(3 %) | 高リスク |
|---|---|---|
| 1 か月 | 1.5 kg | 2.5 kg(5 %) |
| 3 か月 | 1.5 kg | 3.8 kg(7.5 %) |
| 6 か月 | 1.5 kg | 5.0 kg(10 %) |
一か月で 1.5 kg は、気づきにくい量です。見た目ではほとんど分かりません。だから測るのです。
測り方を揃えないと、判定できません
体重は、条件で 1 kg 前後動きます。だから条件を揃えないと、減ったのか測り方が違うのか分かりません。
- 同じ時刻に測る。入浴前、あるいは朝の来所時。どちらかに決めます
- 同じ体重計を使う。事業所に二台あるなら、利用者ごとにどちらかに固定します
- 同じ服装で測る。上着を脱ぐ、履物を脱ぐ。冬と夏で衣類の重さが 1 kg 違うことがあります
- 排泄の後に測る。前と後で 0.5 kg 変わります
- 月に一度、日を決めて測る。「気づいたときに測る」では比べられません
条件を紙に書いて、体重計のそばに貼ってください。
測る職員が替わると、条件が変わります。「上着を脱いで、履物を脱いで、トイレの後に、入浴前に測る」と書いてあるだけで、数字が揃います。
減っていたときに、まず探すこと
「食べていないから減った」で終わらせないでください。なぜ食べないのかに、必ず理由があります。
| 探すところ | 見つかること |
|---|---|
| 口の中 | 義歯が合っていない。歯が痛む。口内炎。口が乾いている |
| 飲み込み | むせる。飲み込むのに時間がかかる。食後に声が変わる |
| 薬 | 薬が変わってから食欲が落ちた。味が変わった |
| お通じ | 便秘が続いている。お腹が張っている |
| 気持ち | 元気がない。人と関わらなくなった。家族に変化があった |
| 食事の形 | 刻みすぎて食べにくい。量が多くて気が滅入る。味が薄い |
いちばん多いのは、口の中と薬です。そしてどちらも、聞かなければ分かりません。「お口の具合はいかがですか」「お薬は変わりましたか」。この二つを聞いてください。
刻み食が、痩せる原因になることがあります
飲み込みが心配だからと刻んで出す。ところが刻んだ食事は、口の中でまとまらず、かえって食べにくくなることがあります。
そして見た目が変わります。何を食べているか分からない皿は、食欲を下げます。刻む前に、本当に刻む必要があるかを確かめてください。軟らかく煮る、一口大に切る、とろみをつける。ほかの手があります。
食事の形態を変えたら、その月の体重を必ず見てください。形態を変えた月に体重が落ちたなら、その変更が原因です。
必要な量を、数で出す
減っていることが分かったら、次は「何 kcal 足りないのか」です。感覚で増やしても戻りません。
必要エネルギーの計算で、その方に必要な一日のエネルギーとたんぱく質が出ます。今の摂取量と比べて、差を埋めます。
一か月で 1 kg 増やすには、一日およそ 240 kcal の上乗せが要ります。これは、間食を一つ足す量です。三食を増やすより、間食を足すほうが現実的な場面が多くあります。
たんぱく質も同時に見てください。エネルギーだけ足しても、筋肉は戻りません。体重 1 kg あたり 1.0 g から 1.2 g が、高齢の方の目安です。
水分も一緒に落ちています
食事量が減ると、食事に含まれる水分も減ります。一日三食から二食になれば、食事から入る水分がおよそ 300 mL 減ります。
体重が減っている方は、脱水の危険がいちばん高い方です。必要水分量の計算で、飲み物で補う量を出してください。
記録の書き方
| 書き方 | |
|---|---|
| 薄い | 体重減少あり。経過観察 |
| 使える | 9/10 測定 49.0 kg(6/10 は 52.0 kg)。3 か月で 5.8 %の減少、中リスク。主食の摂取量が 10 割から 5 割に低下。「入れ歯が当たる」との訴えあり。9/12 ご家族へ連絡、歯科受診を依頼 |
数字、期間、割合、リスク、理由、動いたこと。この六つが入っていれば、管理栄養士にも医師にもそのまま渡せます。
加算との関係
通所介護では、口腔・栄養スクリーニング加算があります。利用者ごとに、栄養状態と口腔の状態を確認して、ケアマネジャーに情報を提供する加算です。
体重の測定と記録は、その根拠になります。加算を取るために測るのではなく、測っているから加算が取れるという順番にしてください。
通所介護の加算は通所介護の加算に、加算の計算は加算の計算にまとめています。
ご家族への伝え方
「痩せてこられました」では伝わりません。数字で伝えてください。
「三か月で 3 kg、5.8 パーセント減っておられます。この期間で 7.5 パーセントを超えると高いリスクとされますので、その手前です。入れ歯が当たるとおっしゃっているので、歯科を受診していただけますか」。
ここまで言えば、ご家族が動けます。動ける形にして渡すことが、伝えるということです。
日々の様子とあわせて伝わる形は、記録が届く仕組みがあると変わります。介護の事業所だけのホームページ制作をご覧ください。
