この頁は、日本人の食事摂取基準(2025 年版)と日本食品標準成分表(八訂)増補 2023 年の二つだけを見ています。対象の方を一度入れれば、必要量からビタミンまで、その方の数字に変わります。
基準は 2025 年版に変わりました
食事摂取基準は五年ごとに改められます。現行は 2025 年版で、令和七年度から使われています。古い 2020 年版の数字を載せたままの資料が世の中にたくさん残っていますので、ご注意ください。
介護の現場に関わる変更は、主に四つです。
- 六十五歳以上のたんぱく質の目標量の下限が、十四パーセントエネルギーから十五パーセントエネルギーへ引き上げられました
- ビタミン D の目安量が 8.5 μg から 9.0 μg へ引き上げられました
- 骨粗鬆症が、栄養素との関連を検討する疾患に加えられました
- 身体活動レベルの値が、六十五歳以上で見直されました。七十五歳以上の「ふつう」は 1.65 から 1.70 になっています
方向はどれも同じです。高齢の方に、もっと食べていただく。とくにたんぱく質と、骨を守るものを。
エネルギーは、計算ではなく体重で確かめます
推定エネルギー必要量という名前のとおり、これは推定です。同じ体重、同じ年齢でも、実際に必要な量は人によって違います。
基準そのものにも「エネルギーの過不足は体重の変化または BMI を用いて評価すること」と書かれています。計算した数字を出していて体重が落ちていくなら足りていませんし、増え続けるなら多すぎます。
だから、いちばん大事な仕事は計算ではなく、体重を測り続けることです。月に一度、同じ日、同じ時刻、同じ服装で。朝食の前がもっとも安定します。
たんぱく質は、合計より配り方です
六十五歳以上の女性で、推奨量は五十グラムです。しかし推奨量は「これを下回ると不足する人が出てくる」という最低限の線であって、目指す量ではありません。
目指すのは目標量の側です。十五パーセントエネルギーから二十パーセントエネルギー。一日千五百キロカロリーの方なら、五十六グラムから七十五グラムになります。推奨量の五十グラムより、はっきり多い。
そして、合計が足りていても朝が少ないと筋肉は作られにくいことが分かっています。一回の食事で一定量のたんぱく質が入らないと、筋肉を作る反応が始まらないためです。
日本の高齢者に多い形
朝はごはんと味噌汁と漬物。昼は麺類。夜に魚と肉が集中する。合計だけを見ていると気づけませんが、朝と昼にほとんど入っていません。朝に卵を一つ、牛乳を一杯足すだけで形が変わります。
糖質を減らす前に、確かめること
糖質を控える話が世の中に多いため、高齢の方でもごはんを減らそうとされることがあります。ここは慎重に見てください。
炭水化物の目標量は五十パーセントエネルギーから六十五パーセントエネルギーで、これは減っていません。ごはんを減らすと、エネルギーが足りなくなります。そしてエネルギーが足りないと、体はたんぱく質を燃やし始めます。せっかく食べた肉や魚が、筋肉にならずに燃料として消えるのです。
糖尿病の方であっても、指示エネルギーは主治医が出します。目標体重に労作の係数を掛けた目安はありますが、勝手に減らす根拠にはなりません。血糖の管理と、低栄養の予防は、両方を同時に見る必要があります。
高齢の方で足りなくなりやすい六つ
| 栄養素 | 足りないと出るもの | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 筋肉が減る、傷が治りにくい、感染に弱くなる | 肉、魚、卵、大豆、乳製品 |
| ビタミン D | 骨が弱くなる、転びやすくなる | 魚、きのこ。日に当たると皮膚でも作られます |
| カルシウム | 骨が弱くなる | 牛乳、小魚、豆腐、青菜 |
| ビタミン B12 | 貧血、ふらつき、物忘れ | 魚、貝、レバー、卵。植物にはほとんど含まれません |
| 亜鉛 | 味が分からなくなる、傷が治りにくい | 牡蠣、肉、卵、豆 |
| ビタミン C | 傷が治りにくい、血管がもろくなる | 野菜、果物、いも |
ビタミン B12 には、もう一つ注意があります。胃の手術を受けた方と、胃酸を抑える薬を長く飲んでいる方は、食べていても吸収されません。物忘れやふらつきの形で出ますので、認知症と間違われることがあります。
亜鉛も見落とされます。味が分からなくなると食べなくなり、食べないからさらに足りなくなる。この輪に入る前に気づいてください。
成分表の八訂で変わったこと
食品成分表も、七訂から八訂で大きく変わりました。二つ覚えておいてください。
一つ目は、エネルギーの計算方法です。それまでは食品ごとの換算係数を使っていましたが、八訂では組成に基づく方法に変わりました。その結果、ごはんは百グラムあたり百六十八キロカロリーから百五十六キロカロリーになりました。全体としてエネルギーは低めに出ます。
二つ目は、食物繊維の測り方です。じゃがいもは 1.3 グラムから 8.9 グラムになりました。七倍近い違いです。古い資料の数字と並べて比べないでください。
この頁の計算は、すべて八訂の増補 2023 年の値です。令和八年三月二十七日付の正誤も反映しています。
低栄養を疑うサイン
数字が取れなくても気づける形があります。次のうち二つ以上が重なったら注意してください。
- 半年で体重が三パーセント以上減った。五十キログラムの方なら一・五キログラム
- 食べ残しが増えた。とくに主菜を残すようになった
- むせるようになった、食事に時間がかかるようになった
- 傷が治りにくくなった、皮膚が乾いてきた
- 元気がない、日中に眠っていることが増えた
体重が測れない方は、ふくらはぎのいちばん太いところを巻き尺で測ります。三十センチメートルを下回るときは、筋肉が減っている可能性を考えます。それも難しいときは、二の腕の厚み、こめかみのくぼみ、ベルトの穴。ご家族はよく気づいておられます。
逆に、急に二キログラム増えたときも見てください。むくみのことがあります。脂肪は二週間で二キログラム増えません。
献立の計算を、毎日の仕事にどう組み込むか
管理栄養士がいる施設なら、専用の仕組みがあります。問題は、いない事業所です。通所介護の多くは、給食を外から取るか、その日の職員が作るかのどちらかで、栄養価を確かめる手立てを持っていません。
全部の献立を計算する必要はありません。次の三つだけで、ずいぶん見えるようになります。
- ふだんの一日の献立を、一度だけ計算してみる。基準に対してどこが足りないかが分かります
- 足りない栄養素を一つ決め、それを補う食品を一つ決める。毎日それを足す
- 三か月後に体重を見る
いちばん多いのは、たんぱく質と食物繊維が足りず、食塩が多い形です。そのときは、汁を一つ減らして、牛乳か卵を一つ足す。それだけで両方が同時に良くなります。
上の献立の計算は、食品を選んで量を入れるだけです。印刷もできますし、CSV に書き出して手元の表に貯めることもできます。毎日開いていただければ、それだけで記録になります。
