加算は、取れるものを取っていない事業所が驚くほど多くあります。理由はたいてい「知らなかった」か「月にいくらになるか分からないので後回しにした」のどちらかです。金額が見えれば、判断できます。
加算は三つの群に分かれます
体制で決まるもの、個別の取り組みで決まるもの、そして減算です。
体制で決まるものは、職員の資格や配置の状況で算定できます。サービス提供体制強化加算、中重度者ケア体制加算、認知症加算がこれにあたります。いったん条件を満たせば、毎日算定できるのが特徴です。
個別の取り組みで決まるものは、利用者ごとに計画を作ったり、評価をしたりして算定します。入浴介助加算、個別機能訓練加算、口腔機能向上加算など。手間はかかりますが、単位数が大きいものが多くあります。
減算は、条件を満たしていないと引かれるものです。送迎をしなかった、同じ建物から通っている、人員基準を欠いた、業務継続計画を作っていない。取り忘れではなく、うっかり引かれる側です。
算定の単位が三種類あります
| あたり | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 1 日 | 利用した日ごとに算定 | 入浴介助加算、認知症加算 |
| 1 月 | 月に一回だけ算定 | 科学的介護推進体制加算、ADL 維持等加算 |
| 1 回 | 実施した回ごとに算定。上限あり | 口腔機能向上加算、栄養改善加算 |
月にいくらになるかを見積もるとき、この違いが効きます。一日あたり四十単位の入浴介助加算は、週二回通う方なら月に八回で三百二十単位。一方、月あたり四十単位の科学的介護推進体制加算は、通う回数に関わらず四十単位です。単位数だけを見比べると判断を誤ります。
単位を円に直す
一単位の単価 = 10 円 ×(1 + 地域区分の上乗せ割合 × 人件費の割合)
通所介護の人件費の割合は四十五パーセントです。一級地なら 10 ×(1 + 0.20 × 0.45)で 10.90 円になります。
利用者三十人の事業所で、一人あたり月に四百単位の加算を取れているとします。合計は一万二千単位。その他の地域なら十二万円、一級地なら十三万八百円です。年にすると百四十万円から百五十七万円になります。
まず確かめてほしい二つ
サービス提供体制強化加算
職員に占める介護福祉士の割合で決まります。四十パーセント以上で六単位、五十パーセント以上で十八単位、七十パーセント以上で二十二単位。勤続年数で満たす道もあります。
これは新しい取り組みを始める必要がありません。今いる職員の資格を数えるだけです。取れる区分なのに届け出ていない事業所が実際にあります。まず名簿を作って数えてください。
口腔・栄養スクリーニング加算
六か月ごとに口腔と栄養の状態を確かめ、ケアマネジャーに情報を提供すると二十単位。片方だけなら五単位です。単位数は小さいのですが、手間も小さく、確実に算定できます。
ここから栄養アセスメント加算、口腔機能向上加算へ広げていく道もあります。いきなり大きな加算を狙うより、確実なところから積む方が現場は続きます。
送迎の減算は、記録が無いと防げません
送迎をしなかった片道につき四十七単位が引かれます。往復なら九十四単位です。利用者三十人の事業所で、月に片道二十回の送迎を行わなかったとすると、九百四十単位、およそ九千四百円が消えます。
ここで問題になるのは、送迎をしたかどうかの記録です。運営指導では、送迎の記録の提出を求められます。誰を、いつ、どこまで送ったか。手書きの記録が残っていない事業所は、加算の可否を証明できません。
送迎の記録が自動で残る仕組みを持っていれば、この心配は消えます。私たちが到着予告の仕組みを作っている理由の一つがここにあります。
加算を取ると、利用者の負担も増えます
忘れられがちなところです。加算の単位にも自己負担がかかります。一割負担の方で、月に四百単位の加算がつけば、およそ四百円の負担増です。三割負担の方なら千二百円になります。
金額としては小さく見えますが、説明なしに請求書が変わると、ご家族は驚きます。加算を新しく取るときは、事前に一人あたりいくら増えるかを出して、書面で説明しておいてください。
加算を取る前に、現場に確かめること
単位数だけを見て届け出ると、現場が回らなくなります。取る前に三つ確かめてください。
一つ目は、誰がその作業をするのかです。個別機能訓練加算なら、居宅を訪問して評価し、計画を作り、三か月ごとに見直します。この時間を誰の勤務のどこに入れるのか。決めずに始めると、機能訓練指導員が残業で吸収することになります。
二つ目は、記録がどこに残るのかです。加算のほとんどは、記録が無ければ算定できません。運営指導で記録を出せなければ、返還を求められます。紙で残すのか、画面で残すのか、誰がいつ入力するのか。ここを先に決めてください。
三つ目は、やめるときのことです。加算は、いったん取ると下げにくくなります。職員が辞めて要件を満たせなくなったとき、速やかに取り下げの届け出をしないと、不正な請求になります。要件がぎりぎりの加算は、慎重に判断してください。
届け出の期限を逃さない
加算は、届け出た月からすぐ算定できるわけではありません。毎月十五日までに届け出が受理されれば翌月から、十六日以降なら翌々月からになります。
四月から取りたい加算は、三月十五日までに出す必要があります。一日遅れると一か月分が消えます。利用者三十人の事業所で一人あたり月に四百単位なら、およそ十二万円です。
体制の加算は、要件を満たした時点ではなく、届け出た時点が基準になります。介護福祉士の割合が四月に七十パーセントを超えていたのに、届け出を六月に出したなら、算定できるのは七月からです。四月と五月と六月の三か月分は戻ってきません。
年に一度、加算の棚卸しを。
職員の入れ替わりで、要件を満たすようになった加算と、満たせなくなった加算の両方が生まれます。年度の変わり目に一度、全部の加算を上の表で見直してください。取れるのに取っていない加算が、たいてい一つか二つ見つかります。
加算は、ケアマネジャーへの説明材料になります
加算はお金の話だけではありません。何の加算を取っているかは、その事業所が何に力を入れているかを表します。
個別機能訓練加算を取っているなら、機能訓練に人を割いているということです。口腔機能向上加算を取っているなら、食べることを見ているということです。認知症加算を取っているなら、研修を受けた職員がいるということです。
ケアマネジャーは、利用者に合う事業所を探しています。歩けるようになりたい方には機能訓練の事業所を、食べられなくなってきた方には口腔と栄養を見る事業所を紹介したい。そのとき、取っている加算が判断の材料になります。
ところが、自分の事業所の頁に加算を書いていない事業所がほとんどです。パンフレットにも書いていません。取っているのに、伝わっていない。これはもったいないことです。
加算の名前をそのまま並べても伝わりませんから、何ができるかの言葉に直して書いてください。「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」ではなく「お一人ずつの計画を作り、機能訓練指導員が二名で見ています」。同じことを言っていますが、届き方が違います。
令和八年六月の改定について
令和八年六月一日に臨時の改定が行われました。基本の単位数は据え置かれ、変わったのは介護職員等処遇改善加算です。
- 対象が、介護職員から、介護に従事する職員全体へ広がりました
- 加算率が引き上げられました
- 区分Ⅰロ・Ⅱロが新しく設けられ、上乗せの道ができました
- 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援が新たに対象になりました
三年に一度の定期の改定ではなく、賃上げのための臨時の改定です。次の定期の改定は令和九年度です。
