処遇改善加算は、介護の加算のなかで金額がいちばん大きいものです。率で乗るため、事業所の規模がそのまま額になります。そして令和八年六月一日に臨時の改定があり、対象と加算率の両方が変わりました。ここでは、区分の違いと、上の区分へ行くために何が要るのかを整理します。
令和八年六月の改定で変わったこと
三年に一度の定期の改定ではありません。介護に従事する職員の賃上げを目的とした臨時の改定です。改定率は全体で二・〇三パーセント、うち処遇改善の分が一・九五パーセントとされました。
| 変わったこと | 中身 |
|---|---|
| 対象の広がり | 介護職員だけだった対象が、介護に従事する職員全体へ広がりました |
| 加算率の引き上げ | 全対象サービスで引き上げられました。訪問介護のⅠイは 24.5% から 27.0% になっています |
| 区分の新設 | Ⅰロ・Ⅱロが新しく設けられました。上乗せの要件を満たす事業所向けです |
| 対象サービスの追加 | 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援が新たに対象になりました |
基本の単位数は据え置かれました。変わったのは処遇改善加算だけです。次の定期の改定は令和九年度になります。
加算率はサービス種別ごとに違います。
この記事では、確かめられた数値だけを書いています。ご自分のサービス種別の加算率は、必ず厚生労働省の告示か、指定権者の通知でお確かめください。まとめサイトの数値を根拠に計画書を作らないでください。
区分は、何で分かれているのか
大きく四つの柱で分かれています。区分が上がるほど、満たすべき柱が増えます。
一、キャリアパスの整備。職位や職責に応じた任用の要件と、それに応じた賃金体系を作り、就業規則などに書いて職員に周知することです。書類の仕事で、お金はかかりません。
二、研修の実施。資質の向上のための計画を作り、研修の機会を設けます。外部の研修に出す費用も、この要件を満たす形になります。
三、昇給の仕組み。経験、資格、評価のいずれかに応じて昇給する仕組みを作り、書面で明らかにします。ここでつまずく事業所が多くあります。「頑張った人を上げます」では要件を満たしません。何をどう評価して、いくら上がるのかまで書く必要があります。
四、職場環境等の要件。入職促進、資質の向上、両立支援、腰痛対策、生産性の向上、やりがいの向上といった区分から、決められた数の取り組みを行います。区分が上がるほど、必要な数と幅が増えます。
令和八年六月に新設されたⅠロ・Ⅱロは、この四つに加えて、生産性の向上に関わる取り組みなどの上乗せの要件を満たしたときの区分です。要件の中身は指定権者の手引きで確かめてください。

配り方は、事業所が決められます
よくある誤解が二つあります。
一つ目は「全員に同じ額を配らなければならない」というものです。そうではありません。配分の方法は事業所が決められます。経験の長い職員に厚く配ることも、資格を持つ職員に厚く配ることもできます。
二つ目は「一時金で配ってはいけない」というものです。これも違います。月々の基本給に乗せる方法、手当として付ける方法、賞与や一時金として配る方法、どれも認められています。
ただし条件があります。配った額の合計が、受け取った加算の額を下回ってはいけません。そして、その配り方を決めた根拠と、実際に配った記録を残しておく必要があります。
実際に指摘を受けるのは、額そのものより記録です。誰にいくら配ったのか、その合計が加算の額とどう対応しているのか。年度が終わってから作ろうとすると必ず苦労します。月ごとに一枚残してください。
計画書と実績報告書
年度ごとに、計画書を出して、年度が終わったら実績報告書を出します。この二つが揃っていないと、返還を求められます。
計画書には、加算の見込み額、賃金改善の見込み額、区分ごとの要件をどう満たすか、職場環境等の要件でどの取り組みを行うかを書きます。提出の期限は指定権者によって違いますので、年度の初めに必ず確かめてください。
実績報告書では、見込みではなく実際の額を書きます。ここで見込みと実績がずれることがあります。利用者が減って加算が見込みより少なくなった、あるいは職員が増えて配る先が増えた。ずれること自体は問題ではありません。問題は、配った額が受け取った額を下回っていることです。
上の区分へ行くために、まず確かめる三つ
順番があります。お金のかからないものから確かめてください。
一、書類が揃っているか。キャリアパスの要件は、就業規則と賃金規程を整えれば満たせます。今の規程に、職位ごとの役割と、それに対応する賃金の考え方が書かれているかを見てください。書かれていなければ、書き足すだけです。
二、研修の記録が残っているか。研修を行っていても、記録がなければ要件を満たしたことになりません。日付、参加者、内容、時間の四つを一枚に残します。外部の研修に出した分も、受講の証明を綴じておきます。
三、職場環境等の要件で、すでにやっていることを数える。腰痛対策の用具を入れた、シフトの希望を聞くようにした、記録を紙から画面に変えた。日常でやっていることが、そのまま要件に当てはまることがあります。新しく始める前に、今やっていることを書き出してください。

職員に、いくら増えたのかを伝えていますか
処遇改善加算は、賃上げのための制度です。ところが、給与明細を見ても何が加算による分なのか分からない事業所が少なくありません。
手当として名前を付けて明細に出す、あるいは年に一度、加算による賃金改善の総額を職員に伝える。どちらでも構いませんが、伝わっていないと制度の目的が達せられません。
そして採用の場面では、この情報が効きます。求人の頁に「処遇改善加算(Ⅰ)を算定しています」と書いても、応募する側には伝わりません。「加算による手当を、月に○円お支払いしています」と書けば伝わります。金額を書けないなら「処遇改善の加算で受け取った分は、全額を手当として毎月お渡ししています」と書きます。
介護の求人は、求人サイトを見た人が事業所の名前で検索してから応募します。そのとき、事業所の頁に何も書いていなければ、判断の材料がありません。採用のための頁に何を書くかもあわせてご覧ください。
年度の流れを、一枚にしておきます
処遇改善加算は年度ごとに動きます。流れを一枚にしておくと、毎年慌てずに済みます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 年度の初め | 計画書を作って提出する。提出の期限は指定権者に確かめる |
| 毎月 | 配った額を記録に残す。誰にいくら配ったかを一枚に |
| 年度の途中 | 区分を変えるなら、変更の届け出。期限は別に定められています |
| 年度の終わり | 実績報告書を作って提出する。配った合計が受け取った額を下回っていないか確かめる |
毎月の記録がいちばん大事です。年度が終わってから一年分を作ろうとすると、必ず苦労します。給与計算のときに、加算による分を別の列で出しておく形にしておくと、そのまま実績報告書の材料になります。
職場環境等の要件で、すでにやっていることを数えます
新しく何かを始める前に、今やっていることを書き出してください。要件に当てはまるものが、たいてい見つかります。
- 腰痛対策の用具を入れた。移乗の補助具、スライディングシート
- シフトの希望を聞くようにした。子育て中の職員の勤務を調整している
- 記録を紙から画面に変えた。転記の時間が減った
- 会議の時間を勤務時間の中に入れた
- 資格取得の費用を事業所が出している
- 健康診断のほかにストレスチェックを行っている
どれも要件のどこかに当てはまります。当てはまることを確かめたら、いつから始めたか、誰が対象かを記録に残してください。要件を満たしていても、記録がなければ説明できません。
加算の全体を見渡すために
処遇改善加算は率で乗るため、ほかの加算を取れば取るほど、処遇改善の額も増えます。加算の全体を一度見渡してみてください。通所介護の加算・減算の早見で、取っている加算を選ぶと一か月の見込みが円で出ます。通所介護の加算の一覧と訪問介護の加算の一覧も用意しています。
ケアマネジャーとご家族と求職者に届く形で作ります。送迎の到着予告は、後から積めるオプションです。相談と見積もりは無料です。
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