訪問介護は、通所介護よりも加算の効き方が大きいサービスです。基本報酬が短時間の積み重ねでできているため、率で乗る加算が全体を押し上げます。とくに特定事業所加算は、所定単位数に対する割合で付きますので、区分が一つ変わるだけで年間の収入が大きく動きます。この記事では、訪問介護の加算と減算を整理し、判断の順番まで書きます。
訪問介護の加算は、率で乗るものが中心です
通所介護の加算は、一日いくら、一月いくらという固定の単位数が中心でした。訪問介護は違います。特定事業所加算も、処遇改善加算も、所定単位数に割合を掛ける形です。
つまり、訪問の件数が増えるほど加算の額も増えます。逆に、件数が減れば加算も減ります。固定の加算と違って、事業の規模にそのまま比例します。
だから訪問介護では、加算を取ることと、件数を増やすことが同じ方向を向きます。どちらか一方だけを追いかけるより、両方を同時に見る方が効率がよくなります。
特定事業所加算
訪問介護でいちばん大きい加算です。区分によって、所定単位数に対して掛ける割合が変わります。要件は大きく三つの系統に分かれます。
| 要件の系統 | 中身の要点 |
|---|---|
| 体制の要件 | 計画的な研修、会議の開催、文書などによる指示と報告、健康診断の実施、緊急時の対応の明示 |
| 人材の要件 | 介護福祉士の割合、勤続年数の長い職員の割合、サービス提供責任者の常勤専従など |
| 重度対応の要件 | 要介護 4 以上や認知症の方、たんの吸引などが必要な方の受け入れ割合 |
区分ごとに、どの系統をどこまで満たすかが変わります。詳しい割合と要件は指定権者の手引きで確かめてください。ここで押さえておきたいのは、体制の要件はお金をかけずに満たせるということです。研修の計画を立て、会議を開き、記録を残す。この三つが揃っていない事業所が実際にあります。
いちばんつまずくのが会議の記録です。開いていても記録が残っていない。あるいは出席者の名前が書かれていない。運営指導ではここを見られます。会議のたびに、日付、出席者、議題、決まったことの四つを一枚に残してください。

そのほかの主な加算
| 加算 | 要点 |
|---|---|
| 初回加算 | 新規に訪問介護計画を作成した利用者について、サービス提供責任者が初回に同行するか自ら訪問した月に算定します |
| 緊急時訪問介護加算 | 利用者やご家族からの要請で、ケアマネジャーと連携のうえ、予定になかった訪問を行ったときに算定します |
| 初回加算と特定事業所加算の関係 | どちらも算定できます。要件がそれぞれ独立しています |
| 認知症専門ケア加算 | 認知症介護の研修を修了した職員を配置し、対象の利用者の割合などの要件を満たしたときに算定します |
| 口腔連携強化加算 | 訪問の際に口腔の状態を確かめ、歯科の医療機関と情報を共有したときに算定します |
| 中山間地域等でのサービス提供加算 | 指定された地域に住む方へ、通常の実施地域を越えて提供したとき、所定単位数の 5% を加算します |
| 介護職員等処遇改善加算 | 所定単位数に区分ごとの割合を掛けます。令和 8 年 6 月の改定で引き上げられました |
緊急時訪問介護加算は、取り忘れの多い加算です。夜間に「転んだので来てほしい」と連絡が入り、実際に行ったのに、算定していない。ケアマネジャーへの連絡と、訪問の記録が揃っていれば算定できます。行った日をその場で記録に残す習慣をつけてください。
減算
| 減算 | 要点 |
|---|---|
| 同一の建物に居住する利用者への減算 | 事業所と同じ建物、または同じ敷地内などに住む利用者が一定の人数を超えるとき、所定単位数から一定の割合が引かれます。人数によって割合が変わります |
| サービス提供責任者の減算 | サービス提供責任者の員数や資格の要件を満たさないとき、所定単位数の 70% になります |
| 人員基準を欠く場合の減算 | 訪問介護員等の常勤換算が 2.5 を下回るとき、所定単位数の 70% になります |
| 高齢者虐待の防止の措置が未実施 | 所定単位数から 1% を引きます |
| 業務継続計画が未策定 | 所定単位数から 1% を引きます |
同一建物の減算は、サービス付き高齢者向け住宅と併設している事業所で必ず関わります。人数の数え方と割合が細かく決められていますので、指定権者に確かめてください。ここを読み違えると、返還の対象になります。
人員基準を先に確かめてください
訪問介護員等は常勤換算で 2.5 人以上、サービス提供責任者は利用者四十人ごとに一人以上です。ここを下回ると、加算どころか基本報酬が三割減ります。
常勤換算 2.50 ちょうどで組んでいる事業所は、誰かが半日休んだだけで下回ります。運営指導では月ごとに見られますので、少し余裕を持たせてください。常勤換算の計算で今の数字を出せます。
サービス提供責任者は、利用者が四十一人になった時点で二人目が必要になります。四十人ちょうどで運営している事業所は、次の一人を受けるかどうかで判断が変わります。受ける前に計算してください。

単位を円に直す
一単位の単価 = 10 円 ×(1 + 地域区分の上乗せ割合 × 人件費の割合)
訪問介護の人件費の割合は七十パーセントです。通所介護の四十五パーセントより高いため、地域区分の影響が大きくなります。一級地なら 10 ×(1 + 0.20 × 0.70)で 11.40 円です。
同じ一級地でも、通所介護は 10.90 円、訪問介護は 11.40 円です。訪問系のほうが、地域による差がはっきり出ます。ご家族に自己負担を説明するときは、必ずお住まいの地域の単価で計算してください。支給限度額と自己負担の計算で、サービスの区分を選べば単価が自動で変わります。
令和八年六月の改定で変わったこと
令和八年六月一日に臨時の改定が行われました。三年に一度の定期の改定ではなく、賃上げのための改定です。
- 介護職員等処遇改善加算の対象が、介護職員から、介護に従事する職員全体へ広がりました
- 加算率が引き上げられました。訪問介護のⅠイは 24.5 パーセントから 27.0 パーセントになっています
- 区分Ⅰロ・Ⅱロが新しく設けられ、上乗せの道ができました
- 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援が新たに対象になりました
基本の単位数は据え置かれています。次の定期の改定は令和九年度です。
判断の順番
訪問介護で加算を積むときの順番は、こうなります。
- 一、人員基準を確かめる。常勤換算 2.5 とサービス提供責任者の数。ここが崩れていたら加算どころではありません
- 二、処遇改善加算の区分を上げられないか確かめる。率で乗るため、影響がいちばん大きい
- 三、特定事業所加算の体制の要件を確かめる。研修計画、会議、指示と報告、健康診断。お金をかけずに満たせます
- 四、取り忘れを拾う。初回加算、緊急時訪問介護加算。実際にやっているのに算定していない分
- 五、減算を消す。虐待防止の措置と業務継続計画。作れば消えます
この順で見ると、多くの事業所で二番と四番と五番に取りこぼしが見つかります。一番と三番は書類の整備で、二番と四番はお金に直結します。
訪問介護の基本報酬の組み立て
加算の話をする前に、基本報酬の形を押さえておきます。訪問介護は、身体介護と生活援助に分かれ、それぞれ時間で単位が決まります。身体介護は二十分未満から始まり、時間が延びるほど単位が上がります。生活援助は二十分以上四十五分未満と、四十五分以上の二段です。
そして身体介護に引き続いて生活援助を行った場合は、身体介護の単位に生活援助の分が加わる形になります。この組み合わせをどう使うかで、同じ時間でも単位が変わります。
ここを理解していないと、加算の効き方も見えません。加算の多くは所定単位数に対する割合で乗りますので、基本報酬の組み立てが変われば加算の額も変わります。
件数を増やすことと、加算を取ることは同じ方向を向きます
率で乗る加算が中心である以上、訪問の件数が増えれば加算も増えます。逆に言えば、加算だけを追いかけても、件数が減っていれば全体は増えません。
訪問介護の件数は、ケアマネジャーからの依頼で決まります。そのケアマネジャーが何を見て事業所を選ぶかというと、対応できる時間帯、受けられる範囲、そして重度の方を受けられるかどうかです。
特定事業所加算の重度対応の要件を満たしているということは、まさにその情報です。要介護四以上の方を受けている、たんの吸引が必要な方を受けている。これはケアマネジャーにとって、探している情報そのものです。
加算の要件を満たすことは、営業の材料を作ることでもあります。
要件を満たしたら、事業所の頁に中身の言葉で書いてください。加算の名前ではなく、何ができるかを。それがケアマネジャーの目に触れる形になります。
人員基準を欠くと、加算どころではありません
訪問介護員等の常勤換算が 2.5 を下回ると、所定単位数の七十パーセントになります。三割が消えます。加算をいくつ積んでも、この減算には勝てません。
サービス提供責任者の減算も同じで、七十パーセントになります。利用者が四十一人になったのに二人目を置いていない。この状態が続くと、その間ずっと三割減です。
職員の退職の申し出があった日に、必ず計算してください。辞めた後ではなく、辞めると分かった時点です。一か月あれば手が打てます。人員基準の確認で、サービスを選んで今の常勤換算数を入れると判定できます。
特定事業所加算を取っているということは、研修を計画的に行い、会議を開き、重度の方も受け入れているということです。これはケアマネジャーにとって、たいへん強い情報です。
ところが、自分の事業所の頁にそれを書いている訪問介護事業所は、ほとんどありません。加算の名前をそのまま書いても伝わりませんから、中身の言葉に直します。「特定事業所加算(Ⅰ)」ではなく「毎月の研修と会議を続けています。たんの吸引が必要な方もお受けしています」。同じことを言っていますが、届き方が違います。
ケアマネジャーは、電話をかける前に事業所の頁を見ます。そこに何も書いていなければ、判断の材料がありません。介護の事業所だけのホームページ制作では、この書き方から一緒に整えます。
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