介護保険で使えるサービスには、要介護度ごとに一か月の上限があります。これを区分支給限度基準額と呼びます。単位で決まっているため、円に直すには地域区分を掛ける必要があります。
限度額は「単位」で決まっています
介護保険のサービスの値段は、円ではなく単位で決められています。訪問介護を三十分使えば何単位、通所介護を七時間使えば何単位、というふうにです。一か月に使える単位の上限が、要介護度ごとに決まっています。
| 要介護度 | 一か月の限度(単位) |
|---|---|
| 要支援 1 | 5,032 |
| 要支援 2 | 10,531 |
| 要介護 1 | 16,765 |
| 要介護 2 | 19,705 |
| 要介護 3 | 27,048 |
| 要介護 4 | 30,938 |
| 要介護 5 | 36,217 |
一単位が何円になるかは、地域で変わります
ここが分かりにくいところです。一単位は基本的に十円ですが、地域によって上乗せがあります。人件費の水準が高い地域ほど、単価が高くなります。
一単位の単価 = 10 円 ×(1 + 地域区分の上乗せ割合 × 人件費の割合)
上乗せ割合は一級地の二十パーセントから、その他の地域の〇パーセントまで八段階。人件費の割合はサービスごとに七十、五十五、四十五パーセントの三段階に分かれています。
訪問介護は人件費の割合が七十パーセントですから、一級地では 10 ×(1 + 0.20 × 0.70)で 11.40 円になります。同じ一級地でも、通所介護は人件費の割合が四十五パーセントですから 10.90 円です。同じ地域でもサービスによって単価が違うのは、このためです。
要介護三の一か月は、地域でこれだけ変わります
| 地域 | 通所介護の単価 | 要介護 3 の限度額 |
|---|---|---|
| 1 級地 | 10.90 円 | 294,823 円 |
| 4 級地 | 10.54 円 | 285,086 円 |
| 7 級地 | 10.14 円 | 274,267 円 |
| その他 | 10.00 円 | 270,480 円 |
一級地とその他で、二万四千円あまりの差があります。ご家族に説明するときは、必ずお住まいの地域の単価で計算してください。
限度額を超えた分は、全額が自己負担になります
限度額の中であれば、一割から三割の負担で済みます。超えた分は保険が使えませんので、十割です。一割負担の方が限度額を千単位超えたとき、その千単位ぶんはおよそ一万円がそのまま請求されます。
ケアプランを組むときに、限度額の九十パーセント台で収まるようにするのが一般的です。ぎりぎりで組むと、体調が崩れて訪問を一回増やしただけで超えます。
限度額の対象にならないもの
すべてのサービスが限度額に含まれるわけではありません。次のものは対象の外で、別に計算されます。
- 居宅療養管理指導
- 特定福祉用具販売、住宅改修
- 施設の食費と居住費、通所の食事代、おむつ代などの実費
- 介護保険施設に入っている間のサービス
ご家族から「限度額の中なのに請求が多い」と言われることがあります。たいていは食事代やおむつ代です。最初に説明しておくと、あとの行き違いが減ります。
自己負担が高くなったときの、高額介護サービス費
一か月の自己負担が一定の額を超えたとき、超えた分が後から戻る仕組みがあります。所得によって上限が分かれています。
| 区分 | 一か月の上限 |
|---|---|
| 課税所得 690 万円以上 | 140,100 円 |
| 課税所得 380 万円以上 690 万円未満 | 93,000 円 |
| 市町村民税が課税されている(上記を除く) | 44,400 円 |
| 世帯の全員が市町村民税非課税 | 24,600 円 |
| 生活保護を受けている方など | 15,000 円 |
申請が要ります。一度申請すれば、次からは自動で振り込まれる市区町村がほとんどです。限度額の中で使っていても自己負担が四万四千四百円を超える方はいますので、ご家族に伝えてあげてください。
単位数の目安(通所介護の場合)
限度額のうち、通所介護がどれくらいを占めるのかを知っておくと、話が早くなります。通常規模の事業所で、七時間以上八時間未満のサービスを一回受けたときのおおよその単位数は、要介護一でおよそ六百台、要介護五でおよそ千百台です。
週に二回、月に八回通うとすると、要介護三の方でおよそ七千単位前後。限度額の 27,048 単位に対して四分の一ほどです。残りを訪問介護や福祉用具や短期入所で使うことになります。
ここに加算が乗ります。入浴介助加算が一日四十単位なら月に三百二十単位。個別機能訓練加算(Ⅰ)ロが一日七十六単位なら月に六百八単位。加算だけで千単位近くになることがあります。
週の回数を増やしたいと相談されたとき、この計算を先にしておくと「増やせます」「限度額を超えます」がその場で答えられます。ケアマネジャーからの信頼は、こういうところで積み上がります。
ご家族への説明で、つまずくところ
三つあります。
一つ目は、限度額が円ではなく単位で決まっていることです。「二十七万円まで使えます」と説明すると、単位と円の区別がつかないままになります。「限度額のうち、今月は八割ほど使っています」という言い方の方が伝わります。
二つ目は、限度額の外にあるものです。食事代、おむつ代、施設の居住費。これらは限度額に入りません。最初の契約のときに、限度額に入るものと入らないものを紙で分けて渡しておくと、後の行き違いが減ります。
三つ目は、自己負担の割合です。同じ世帯でも、所得によって一割の方と二割の方がいます。介護保険負担割合証に書いてありますので、毎年八月の更新のときに必ず確かめてください。割合が変わっていたことに気づかず、請求してから発覚することがあります。
要介護度が変わったときに、何をするか
区分変更で要介護度が上がると、限度額が増えます。要介護二から三へ上がれば、19,705 単位から 27,048 単位へ、七千単位あまり増えます。円にしておよそ七万円ぶんです。
ここで事業所がすべきことは二つあります。一つは、増えた枠でサービスを増やせるかをケアマネジャーと相談すること。もう一つは、自己負担がいくら増えるかをご家族に伝えることです。
後者を忘れる事業所が多くあります。要介護度が上がって喜ばれたあと、翌月の請求書を見て驚かれる。一割負担の方でも七千円ほど増えますし、三割負担の方なら二万円を超えます。
逆に、要介護度が下がったときはもっと注意が要ります。限度額が減りますので、今までどおりのサービスが入らなくなることがあります。認定の結果が出た時点で、すぐに計算してください。翌月になってから気づくと、超過分が全額自己負担になります。
事業所の側で、この計算を使う場面
通所介護の事業所が限度額を計算する場面は、主に三つあります。
- 週の回数を増やしたいと相談されたとき、限度額に収まるかを先に確かめる
- 区分変更で要介護度が上がったとき、増やせる回数を計算する
- 加算を新しく取ったとき、利用者の負担がいくら増えるかを説明する
特に三番目です。加算を取ると事業所の収入は増えますが、利用者の自己負担も増えます。金額を先に出しておかないと、請求書を見てから驚かれます。上の道具で、加算を含めた単位数を入れて確かめておくことをお勧めします。
