低栄養は、少しずつ進みます。ある日突然分かるものではなく、気づいたときには筋肉が減り、転びやすくなっています。ここでは、早く気づくためのサインと、体重が測れない方をどう見るかを書きます。
低栄養は、太っている方にも起こります
最初にここを押さえてください。体重があっても、たんぱく質が足りていないことがあります。ごはんと麺は食べるが、肉と魚と卵をほとんど食べない。この形では、体重は保たれてもたんぱく質は足りません。
BMI だけを見ていると見落とします。何を食べているかを見てください。
体重の減り方の目安
| 期間 | 注意する減り方 |
|---|---|
| 1 か月 | 3% 以上 |
| 3 か月 | 5% 以上 |
| 6 か月 | 10% 以上 |
体重五十キログラムの方なら、半年で五キログラムです。ただし、そこまで待つ必要はありません。半年で三パーセント、つまり一・五キログラム減っていたら、その時点で理由を探してください。
ここで気づけると、食事の形や量を変えるだけで戻せることがあります。放っておくと、筋肉が減り、転びやすくなり、骨が折れ、入院につながります。入院すればさらに落ちます。この連鎖に入る前が勝負です。
体重以外のサイン
次のうち二つ以上が重なったら注意してください。
- 食べ残しが増えた。とくに主菜を残すようになった
- むせるようになった、食事に時間がかかるようになった
- 傷が治りにくくなった、皮膚が乾いてきた
- 元気がない、日中に眠っていることが増えた
- 衣服がゆるくなった。ベルトの穴が変わった、指輪が回るようになった
- 握力が落ちた。ペットボトルの蓋が開けられなくなった
主菜を残すというのは、たんぱく質が入らなくなっているということです。ごはんは食べているから大丈夫、とはなりません。何を残しているかまで記録してください。
体重が測れないときの見方
立てない方の体重は、車椅子ごと量れる体重計がなければ測れません。訪問の現場では、そもそも体重計が家にないこともあります。
ふくらはぎの周囲。いちばん太いところを巻き尺で測ります。三十センチメートルを下回るときは、筋肉が減っている可能性を考えます。巻き尺一本でできて、月ごとの変化も追えます。
上腕の周囲。二の腕のいちばん太いところ。こちらも巻き尺で測れます。
目と手で見る。二の腕を軽くつまんだときの厚み、こめかみのくぼみ、肩の骨の出方、鎖骨のくぼみ。毎日会っている職員は、変化に気づきます。
数字が取れないことより、記録が途切れることの方が問題です。巻き尺の数字でも、衣服のゆるみの記録でも、続けられる形を選んでください。
逆に、急に増えたときも見ます
急に二キログラム増えたなら、脂肪ではなく水です。脂肪は二週間で二キログラム増えません。
むくみを疑ってください。足のすねを指で押して、へこみが戻らなければむくみです。心臓や腎臓の側に理由があるかもしれませんので、医師に伝えてください。
気づいたあとに、何をするか
順番があります。
一、食べていないのか、食べても減るのか。食事量の記録と体重を突き合わせます。食べているのに減るなら、体の側に理由があります。医師に相談してください。
二、食べていないなら、なぜか。むせる、噛めない、味が分からない、便が出ない、薬が変わった、うつ気味、口の中が痛い。理由によって手が違います。
三、量を増やす前に、密度を上げる。同じ一膳に油を少し足す、汁に牛乳を使う。見た目の量は変わらないのに中身が増えます。食が細い方に有効です。
四、回数を分ける。三食で足りないなら、十時と三時に少しずつ。一度に多く出すより、結局たくさん入ります。
五、姿勢を直す。足が床に着いていること、テーブルの高さが合っていること。背もたれに寄りかかったままだと飲み込みにくくなります。
見落とされやすい三つ
亜鉛。足りないと味を感じにくくなり、その結果さらに食べなくなります。肉、魚、卵、豆に含まれます。薬の影響でも起きますので、医師に相談してください。
便秘。便が出ないと食欲は落ちます。食物繊維と水分の両方が要ります。繊維だけ増やして水が足りないと、かえって固くなります。
薬。新しい薬が始まってから食べなくなった。この順番に気づけるのは、毎日見ている職員だけです。お薬手帳を確かめてください。
記録の形を、続けられるものにします
毎日すべてを記録しようとすると、続きません。次の三つだけで十分です。
- 体重を月に一度。同じ日、同じ時刻、同じ服装で
- 食事の摂取量を、主食と主菜に分けて。十割法でも五段階でも構いません
- 気づいたことを一行。むせた、残した、元気がない
この三つが半年並ぶと、変化が見えます。逆に、一か月だけ詳しく記録して途切れたものは、比べられません。
記録した食事の内容から、実際にどれだけ入っているかを確かめたいときは、栄養の計算の献立の計算が使えます。食品成分表の 2,538 品目から選んで、その方の必要量に対する充足率が出ます。
ご家族にも、伝えてください
低栄養は、ご家族が最も気づきやすい立場にあります。毎日会っていないぶん、変化が見えるからです。
「最近、痩せられたように思いますが、いかがですか」。この一言をかけるだけで、ご家族の側から情報が出てきます。家では何を食べているのか、食欲はどうか。施設で見えている半分の情報しか、私たちは持っていません。
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