個別機能訓練加算は、通所介護の加算のなかで金額が大きく、そして最も手間のかかる加算です。単位数だけを見て届け出ると、現場が回らなくなります。この記事では、区分の違いと、それぞれに何が要るのかを整理します。
三つの区分と単位数
| 区分 | 単位 | あたり | 要件の要点 |
|---|---|---|---|
| (Ⅰ)イ | 56 | 1 日 | 専従の機能訓練指導員を 1 人以上配置。居宅を訪問して評価し、計画を作ること |
| (Ⅰ)ロ | 76 | 1 日 | (Ⅰ)イの要件に加えて、機能訓練指導員をもう 1 人以上配置すること |
| (Ⅱ) | 20 | 1 月 | (Ⅰ)のいずれかを算定したうえで、厚生労働省へ提出し、返しを活かすこと |
(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロは、どちらか一方だけを算定します。両方を同時には算定できません。(Ⅱ)は(Ⅰ)に上乗せする形です。
金額の差を実感で見ておきます。利用者三十人が月に八回通う事業所で、(Ⅰ)イなら 56 × 8 × 30 で 13,440 単位、その他の地域でおよそ十三万四千円。(Ⅰ)ロなら 76 × 8 × 30 で 18,240 単位、およそ十八万二千円です。月に五万円近い差になります。
(Ⅰ)ロに必要な、もう一人
(Ⅰ)イから(Ⅰ)ロへ上げるために必要なのは、機能訓練指導員をもう一人配置することです。ここで判断が要ります。
月に五万円ほど増えるのに対し、常勤の理学療法士や作業療法士を一人雇うと、人件費はそれをはるかに超えます。数字だけを見れば合いません。
ただし、機能訓練指導員になれるのは理学療法士だけではありません。作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、そして一定の実務経験を持つはり師ときゅう師も該当します。看護職員が該当することは、判断を大きく変えます。すでに配置している看護職員を機能訓練指導員として位置づけられる場合があるためです。
ただし専従の要件と兼務の可否は、区分と配置の形によって扱いが変わります。ここは必ず指定権者に確かめてください。読み違えると返還の対象になります。

居宅訪問が要ります
この加算の最も重い要件が、居宅の訪問です。
算定を始める前に居宅を訪問して、その方が実際に暮らしている場所を見ます。玄関の段差、廊下の幅、手すりの有無、トイレまでの距離、台所の高さ。施設の中だけを見ていては分からないことが、そこにあります。
そして三か月に一回以上、居宅を訪問して計画を見直します。この頻度が要件です。利用者が三十人いれば、三か月で三十軒を回ることになります。一日一軒でも一か月半かかります。
この時間を、誰の勤務のどこに入れますか。
いちばん多い失敗が、ここを決めずに始めることです。機能訓練指導員が、通常の勤務のあとに残って回ることになります。半年は続きますが、その先は続きません。始める前に、訪問の日を勤務表に入れてください。
計画に書くこと
個別機能訓練計画には、その方の目標と、そこへ向かう訓練の中身を書きます。要点は三つです。
一、目標は生活の言葉で書きます。「下肢筋力の向上」ではなく「トイレまで手すりなしで歩けるようになる」。前者は手段で、後者が目標です。ご本人とご家族が読んで分かる言葉にします。
二、居宅の状況を反映させます。訪問して見たことが計画に出ていないと、何のために訪問したのか分かりません。「玄関に二段の段差があるため、段差の昇降を訓練に入れる」。この一行があるかどうかで、計画の質が変わります。
三、多職種で作ります。機能訓練指導員だけで作るものではありません。看護職員、介護職員、生活相談員が関わって作ります。誰が関わったかを記録に残してください。

(Ⅱ)の提出は、思ったより軽い
(Ⅱ)は、(Ⅰ)で作った計画の情報を厚生労働省へ提出し、返ってきた情報を活かすものです。月に二十単位ですから、利用者三十人で六百単位、およそ六千円。金額としては小さく見えます。
ただ、提出そのものは一度仕組みを作ってしまえば軽い作業です。すでに科学的介護推進体制加算を取っている事業所なら、提出の流れはできています。(Ⅰ)を取っているのに(Ⅱ)を取っていないなら、確かめる価値があります。
「返しを活かす」という要件の解釈が難しいところですが、返ってきた情報を会議で見て、計画の見直しに使ったことを記録に残す形で足ります。会議の記録に一行足すだけです。
生活機能向上連携加算との関係
外部のリハビリテーション専門職と連携する生活機能向上連携加算というものもあります。(Ⅱ)は月に二百単位ですが、個別機能訓練加算を算定している場合は百単位になります。
自分の事業所に機能訓練指導員がいない、あるいは一人しかいないという事業所にとっては、外部の力を借りる道になります。訪問リハビリテーション事業所や医療機関のリハビリ職に来てもらい、共同で評価して計画を作ります。
どちらを選ぶかは、近くに連携できる相手がいるかどうかで決まります。まず地域の訪問リハビリテーション事業所に相談してみてください。
取ると決めたら、順番はこうなります
- 一、機能訓練指導員に該当する職員が何人いるかを数える。看護職員も含めて数えます
- 二、(Ⅰ)イか(Ⅰ)ロか、どちらを目指すかを決める
- 三、居宅訪問の日を勤務表に入れる。三か月で全員を回れる形にする
- 四、計画の様式を作る。目標を生活の言葉で書ける欄にしておく
- 五、記録の残し方を決める。誰がいつ入力するかまで
- 六、届け出る。毎月十五日までなら翌月から、十六日以降なら翌々月から
三番目を飛ばさないでください。ここを決めずに始めた事業所は、半年後に苦しくなります。
機能訓練指導員になれる資格
| 資格 | 備考 |
|---|---|
| 理学療法士 | 歩行や動作の訓練を専門にします |
| 作業療法士 | 生活の動作、手の使い方を専門にします |
| 言語聴覚士 | 飲み込みと言葉を専門にします |
| 看護職員 | 看護師・准看護師。多くの事業所ですでに配置しています |
| 柔道整復師 | |
| あん摩マッサージ指圧師 | |
| はり師・きゅう師 | 一定の実務経験と研修の修了が要件になります |
看護職員が該当することが、判断の分かれ目です。すでに看護職員を配置している事業所であれば、新しく人を雇わずに区分を上げられる場合があります。ただし専従の要件と、他の職務との兼務がどこまで認められるかは、配置の形によって変わります。指定権者に確かめてから届け出てください。
訓練の中身は、生活の動作から選びます
個別機能訓練は、筋力トレーニングのことではありません。目標が「トイレまで手すりなしで歩く」なら、訓練の中身も歩くことに関わるものになります。
居宅を訪問して見た段差の高さ、廊下の幅、手すりの位置。そこで実際に必要な動作を、施設の中で練習します。玄関に二段の段差があるなら、二段の昇降を練習します。台所の高さが低いなら、その高さでの立ち仕事を練習します。
この「実際の家に合わせる」ところが、居宅訪問を要件にしている理由です。訪問して見たことが訓練の中身に出ていないなら、訪問の意味がありません。
三か月ごとの見直しで、何を書き直すか
三か月に一回、居宅を訪問して計画を見直します。このとき、前の計画をそのまま写して日付だけ変える、ということをしないでください。運営指導でいちばん指摘されるのがここです。
見直すのは三点です。目標に近づいたか。近づいていないなら、何が邪魔をしているか。そして次の三か月で何を変えるか。
目標に届いたなら、次の目標を立てます。届いていないなら、目標そのものが高すぎたのか、訓練の中身が合っていなかったのか、それとも家の側に理由があるのかを見ます。手すりを一本付ければ解決することもあります。そのときは福祉用具の事業者につなぎます。
ケアマネジャーには、この加算がよく伝わります
個別機能訓練加算を取っているということは、機能訓練に人を割いていて、居宅まで見に行っているということです。ケアマネジャーにとって、これはたいへん分かりやすい情報です。
「歩けるようになりたい」という希望を持つ方を担当したとき、真っ先に思い出してもらえる事業所になります。そのためには、事業所の頁に書いておく必要があります。加算の名前ではなく、中身の言葉で。
「お一人ずつの目標を立て、ご自宅にも伺って、三か月ごとに見直しています」。この一文があるかどうかで、電話がかかってくる確率が変わります。加算の早見で月額を確かめたあとは、伝え方まで考えてみてください。
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